相続した不動産の売却方法|税金・手続き・注意点を完全解説
相続不動産の売却手順、相続登記の義務化、相続税と譲渡所得税の関係、取得費加算の特例、空き家の3000万円特別控除まで完全解説します。
親から不動産を相続したものの、自分では使わないため売却を検討している方は多いでしょう。しかし、相続不動産の売却には通常の売却とは異なる手続きや税金の知識が必要です。
この記事では、相続登記から売却完了まで、知っておくべきポイントを完全解説します。
相続不動産の売却手順
相続した不動産を売却するには、以下の手順を踏む必要があります。
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 1 | 遺産分割協議 | 1〜6ヶ月 |
| 2 | 相続登記(名義変更) | 2週間〜1ヶ月 |
| 3 | 不動産の査定・売却活動 | 1〜6ヶ月 |
| 4 | 売買契約・引渡し | 1〜2ヶ月 |
| 5 | 確定申告 | 翌年2〜3月 |
ポイント:相続登記をしないと売却できない
不動産を売却できるのは登記上の所有者のみです。被相続人の名義のままでは売却できないため、まず相続登記を完了させる必要があります。
相続登記の義務化(2024年4月〜)
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。これは過去の相続にも遡及適用されます。
義務化の主なポイント
- 期限: 相続を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要がある
- 過去の相続: 2024年4月1日から3年以内(2027年3月末まで)に申請が必要
- 罰則: 正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料
- 相続人申告登記: 遺産分割が決まらない場合の簡易的な対応策も新設
相続登記の必要書類
| 書類 | 取得先 |
|---|---|
| 被相続人の出生〜死亡までの戸籍謄本 | 本籍地の市区町村 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地 |
| 被相続人の住民票の除票 | 最後の住所地 |
| 相続人の住民票 | 各相続人の住所地 |
| 遺産分割協議書(法定相続以外の場合) | 自分で作成 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 市区町村 |
| 固定資産評価証明書 | 市区町村 |
司法書士に依頼する場合の費用は、5〜15万円程度が目安です。
相続不動産の売却にかかる税金
相続不動産の売却では、「相続税」と「譲渡所得税」の2つの税金を理解する必要があります。
相続税
不動産を含む遺産総額が基礎控除額を超える場合に課税されます。
基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
例えば法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円です。遺産総額がこの額を超えなければ相続税はかかりません。
譲渡所得税
相続不動産を売却して利益が出た場合に課税されます。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
重要なポイント: 相続で取得した不動産の取得費は、被相続人(亡くなった方)が購入した価格を引き継ぎます。被相続人の購入価格が不明な場合は、売却価格の5%が概算取得費となります。
所有期間の判定
相続した不動産の所有期間は、被相続人の取得日から起算します。親が30年前に購入した不動産を相続して売却する場合、長期譲渡(所有期間5年超)が適用されます。
| 区分 | 税率(所得税+住民税+復興特別所得税) |
|---|---|
| 短期譲渡(5年以下) | 39.63% |
| 長期譲渡(5年超) | 20.315% |
活用すべき2つの特例
1. 取得費加算の特例
相続税を支払った方は、相続税の申告期限から3年以内に売却すれば、支払った相続税の一部を取得費に加算できます。
加算できる取得費 = その人の相続税額 ×(売却した不動産の課税価格 ÷ その人の課税価格の合計)
この特例により、譲渡所得が減少し、譲渡所得税を軽減できます。
適用要件:
- 相続または遺贈で財産を取得した人であること
- その財産の取得に対して相続税が課されていること
- 相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却すること
2. 空き家の3000万円特別控除
相続した空き家(被相続人の居住用家屋)を売却する場合、最大3000万円の特別控除を受けられる制度です。
主な適用要件:
- 被相続人が一人暮らしだった居住用家屋であること
- 1981年5月31日以前に建築された家屋(旧耐震基準)であること
- 相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
- 売却価格が1億円以下であること
- 家屋を解体して更地にするか、耐震リフォームを行うこと
2024年1月からは、相続人が3人以上の場合は控除額が2000万円に減額される改正が適用されています。
共有名義の不動産を売却する場合
相続不動産が複数の相続人の共有名義になっている場合、売却にはいくつかの注意点があります。
売却には全員の同意が必要
共有名義の不動産を売却するには、共有者全員の同意と署名・捺印が必要です。一人でも反対すると売却できません。
共有持分だけの売却は避ける
自分の共有持分だけを第三者に売却することは法的には可能ですが、買い手が見つかりにくく、相場の半額以下になることが一般的です。できる限り全員で合意して全体を売却するようにしましょう。
遺産分割で単独名義にする方法
売却を前提としている場合は、遺産分割協議の段階で一人の名義にまとめるのが最もスムーズです。他の相続人には代償金を支払うか、売却後に配分する旨の合意を得ておきましょう。
相続不動産の売却で失敗しないためのポイント
1. 早めに動く
相続登記の義務化により期限が設定されたほか、特例の適用にも期限があります。空き家は時間とともに劣化し、固定資産税も発生し続けるため、売却の意思があるなら早めに行動することが重要です。
2. 相続税の申告期限を意識する
取得費加算の特例を使うためには、相続税の申告期限から3年以内の売却が必要です。相続開始を知った日の翌日から10ヶ月が相続税の申告期限です。
3. 専門家チームを組む
相続不動産の売却は、税理士・司法書士・不動産会社など複数の専門家の協力が不可欠です。最初に相談する不動産会社が提携専門家を紹介してくれるケースも多いため、まずは査定依頼から始めるのがおすすめです。
4. 確定申告を忘れない
特例を利用する場合はもちろん、売却損が出た場合でも確定申告を行うことで将来の税メリットを受けられる場合があります。
まとめ
相続不動産の売却は、手続きが複雑で税金の計算も通常の売却より難しくなります。特に押さえておくべきポイントは以下の通りです。
- 相続登記は義務化されているため、早めに名義変更を済ませる
- 取得費は被相続人の購入価格を引き継ぐ(所有期間も同様)
- 取得費加算の特例と空き家の3000万円特別控除を要件に合えば活用する
- 共有名義は全員の同意が必要なので、遺産分割段階で方針を決める
まずは相続不動産の現在の価値を把握することが第一歩です。
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